将来の生活者市場へのアプローチを考える上で、避けて通れないのは、少子高齢化傾向の人口動態です。ただし、予測を考える際に考えるべきなのは、生物学的に高齢となった生活者が多くなるということだけでないはずです。今の高齢者は昔の世代より健康年齢が上がっており、肉体のみならず、考え方も若々しい高齢者が増えています。

一方、生活者の意識や行動パターンは、バブル時代や就職氷河期時代、ITバブル、リーマンショック、東日本大震災、最近では新型コロナといった、その時代の出来事や“雰囲気”からも大きな影響を受けていると考えられます。

今後の生活者市場を捉えるにあたり、生物学的に加齢していく人口動態だけでなく、生活者の意識や行動に影響する要素をどう加味するかによって、現実に近い将来像を得られるかどうかが左右されると考えられます。

将来の生活者市場の動向を推計するには、それに先立つ人々の意識や行動の変化を年齢別、時代ごとに集計可能な長期時系列データを分析し、そこから予測を行うのが有用です。

「年齢・体験効果分析モデル」は、生活者の意識や行動パターンは、出生時や幼児期など一時期の体験だけでなく,人生の様々な時期の体験の蓄積によって決まるというアイディアに基づいた統計モデルです。このモデルを使用することにより、生活者の意識や行動パターン(例えば、ある食べ物に対する嗜好)が「どの時代の出来事に影響されたか」「その出来事は何歳から何歳の年齢層に影響したか」そして「その影響は何年持続するのか」を推定することができ、従来の「年齢・時代・コーホート分析」と比べ、より予測に向いている分析モデルです。

年齢・体験効果分析モデルとは?

生活者の意識や行動に関するデータの変動を、出生時や幼児期など一時期の体験だけでなく「人生の様々な時期の体験の蓄積による影響」と「年齢による影響」の2要因に分解します(Hanayama, 2004)。そしてこのモデルを使用することにより、生活者の意識や行動パターン(例えば、ある食べ物に対する嗜好)が「どの時代の出来事に影響されたか」「その出来事は何歳から何歳の年齢層に影響したか」そして「その影響は何年持続するのか」を推定することができます(Hanayama, 2015)。 さらに、年齢・体験効果分析では、算出される2要因の推定値を直線回帰分析することにより、将来の市場規模を予測しようとします。

このモデルは、 Hanayama(2007, 2008)のモデルを汎用性を重視して拡張したものであり、有用性に富んだ分析モデルと言えます。

参考文献

Hanayama, N. (2004). Age-environment model for breast cancer. Environmetrics Vol. 15: 219-232.

Hanayama, N. (2015). Effective-experience model for analyzing data given by age and period for food/dish preference. The proceeding of the 2015 Joint Statistical Meetings, August 8-13, Seattle, US.

Hanayama, N. (2007). An extended age period cohort model for analyzing (age, period)-tabulated data. Statistics in Medicine. Statistics in Medicine Vol. 26, Issue 18 : 3459-3475.

Hanayama, N. (2008). Age Period Cumulative Environment Model for Analyzing (Age, period)- tabulated Data on Breast Cancer Deaths. Communications in Statistics – Theory and Methods Vol. 37: 1770-1782.

年齢体験効果 図1

 

  • 体験の影響を受ける最低年齢、最高年齢
  • 体験効果の持続年数
  • 体験効果が無かった(平均的な環境)場合の年齢に伴う変化
  • 対応する時代区分を経験することによる影響

体験効果分析図3

 

■年齢・体験効果分析モデルによる推計

 

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